当社の決算書に一般的に言う「接待交際費」の項目はありません。
ビジネスであれ、お客様と一緒に飲み食いしたとしても、私自ら「領収書くれ…」と言ったことも有りませんし、会社に出した事も有りません。
これは、社長の方針であり、社員に対しての「示し」でもある。
当然、幹部や営業マンにも認めておりません。
確かに、お客様とアルコールの席だけではなく、一緒にコーヒーを飲んだとか、蕎麦を食べたとかに於いて、会計をしなければならない状況は解りますが、 その時は、自分の財布から払いなさいと言っています。当然レシートは貰っても「領収書をくれ…」と言ってはダメです。 相手にしたら「領収書を貰ったらわ!」と言ってくれるが、「うちの社長はケチだから一切交際費は出ないですよ…」と言っても良いです。 時にそのぐらい嘆いてもよいかもしれません。
お金については、沢山の著書もありますし、名言もあります。
「お金は稼ぐより使う方が難しい」と言われますし、お金を使うときには、その人の人間性が見られるものです。お金の使い方に、人の知恵・器量の全てが現れます。
それと同じで、飲食して支払いした後での「領収書くれ…!」の一言は、全てを無にしてしまうものです。
また、社長が払うのと、社員が払うのとでは、全然違います。社長が払う事は当たり前に近く、社員が払うのとではその効果は10倍以上違うものと思っています。
私もよそで、一介の社員が奢ってくれる缶コーヒーのありがたさは一入です。
作家の池波正太郎さんがこんなエピソードを紹介している。
彼が小説を書き始める前、役所務めをしていたころの話です。
ある理髪店で、いくら言っても税金を払ってくれない店主がいた。仕事だから何度と足を運んだがとりつく島もない。 ある日、いつものように集金のために店に行くと、店頭に「忌中」の札が貼ってある。近所の人にたずねると、店主の奥さんが亡くなったという。
彼は黙って財布からお金を出し、香典として置いて役所に戻ったという。もちろんポケットマネーだ。
すると翌日、いくら頼んでも税金の支払に応じなかった店主が、自ら役所に税金を払いに来たと言う。
打算の無いお金の出し方は、人としての「情」を一瞬のうちに素直にさせてしまう力がある。
1~2000円だったかもしれないが、自分の財布から出す行為が「人の情と人への思いの深さ」に触れた瞬間だと思う。 それほど自らの財布からを出す「お金」の効力は計り知れない力があります。
そんなことで、当社は「接待交際費」を一切認めておりません。
序(つい)でだが、その時に持ち合わせが無ければ「今は持っていない…」と最初から言った方がいい。
変にカッコつけるばっかしに、会計の時に「必ずトイレに行く」「寝たふりする」事をしなければならない。そんな事だけは止めよう。